過去絵

現実と夢幻の狭間で
夢をみた。
なんとも言えない形の奇妙なモノ。
人なのかそうでないのかわからない。
ただ口だけが赤々と、光っていた。
その口は優しい言葉を、甘い言葉をささやいた。
わたしはその言葉に安心し、癒されるのを感じた。

それではないなにかが言った。
アレの言葉を聞くな。
さもなければおまえの心は深い絶望と闇色に染まるだろう。

なんのことを言っているのかわからなかった。
でも足はそれに向かって歩いていた。

口はささやくのをやめなかった。
わたしの足がそれに近づいた時、それは言った。
「イッショニ・・・・」
見上げるとそれと同じようなモノが数体、いや数えきれない程にたくさんいた。
同じように口だけがある生き物
口しかない生き物

わたしは走りだした。
急に怖くなった。
少しでも離れようと力の限り走った。

しかし、だいぶ走ったはずなのに少しも進んでいないように
すぐ後ろで口がまたささやいた。
「イッショニ・・・・・・・・・」
口はにっこりと笑った。
恐怖で声がだせなかった。
逃げる足も一歩も動かなかった。
視界が暗い闇色に染まった。

ふと気が付けばそれの背中がみえた。
風も感じた。
それの向こうには一人の青年が見えた。

・・・・・。
絶望がわたしを包んだ。心が何も考えられなくなってからっぽになった。

いつのまにか、わたしもそれと同じ口だけのモノになって青年を追っていた。

2004年09月25日



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